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RWC⑥ アイルランドの叫び2

最終更新: 2019年10月14日

 ことアイルランドに関する限り、人々の気質はその歴史と無関係ではないように思えます。カトリックであるが故に強いられた侮蔑・差別の歴史の中で、彼らは常に「屈せず」の態度を保ち続けます。彼らの表現は不屈と諧謔に満ちています。


 アイルランドは、想像力と言語芸術の島です。 

 まず、前述のドルイド教が想像力の触媒となって、妖精を生み出します。ドルイド教は、ケルト固有の信仰で自然崇拝の多神教。これがいわば大地となって、伝わってきたカトリックの教義の中で「三位一体」説、「父と子と精霊の御名において~」はしずかに染みこんでいきます。アイルランドにキリスト教を伝えた聖パトリックは、ケルトの血が入っていたためドルイド教に寛容であったようで、三つ葉のクローバを手に教えを広めたと言われます。そう、アイルランドの国花であるシャムロック(三つ葉のクローバ)。アイルランドは、カトリックを受け入れても、ドルイド教の土壌は根強く残り独自の想像力を育てていきます。

 また、アイルランドの文学は突き抜けています。特徴は、風刺・ユーモア・屈折、そしてやはり想像力。挙げられるだけ挙げると、J.スウィフト、O.ワイルド、W.イエイツ、J.ジョイス、S.バケットなどなど、ビッグネームばかり。J.スウィフト『ガリバー旅行記』は、子供向けの話と受け取られますが、イギリス社会に対する風刺文学。「家畜人ヤプー」(沼正一)や「天空の城ラピュタ」(宮崎駿)にイメージを提供します。ジェイムス=ジョイス『ユリシーズ』は、プルースト『失われた時を求めて』と並ぶ20世紀最大の小説とされます。多彩な文体、緻密な構成、風刺・パロディ・引用など、文学的あらゆる手法を駆使したと言われますが、難解。私の場合本棚に眠ったまま。

 日本でおなじみのラフカディオ・ハーンもまたケルトの血が流れています。少年期にカトリックの教育を厳しく受けてむしろこれを敬遠し、ドルイド教に傾いていきます。来日後島根の地で日本の「八百万神」に触れて、怪談奇談を初め日本文化に深く傾倒していきます。自らの奥底に眠るケルト、すなわちドルイド教の血が共鳴したのでしょう。

 ブリテン島のうち対岸の町はリバプール。アイリッシュ系が多く住む町でもあります。この町から世界に向けてロックを発信したビートルズのうち、少なくとも3人はアイリッシュの血が流れていると言われています。ジョン=レノン、ポール=マッカートニー、ジョージ=ハリスン。

 ちなみに、人名で言えば「O’」や「Mc」を冠するものはケルト系アイリッシュ(またはスコッチ)。オニール(O'Neill)、オブライエン(O'Brien)、オハラ(O'Hara)、マクドナルド(McDonald)、マッカーサー(MacArthur)、マックイーン(McQueen)など。